東京高等裁判所 平成2年(行ケ)16号 判決
一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)及び二(審決の理由の要点)の事実並びに引用商標の構成及び指定商品が審決の理由の要点2記載のとおりであることは、当事者間に争いがない。
二 そこで、原告主張の取消事由の存否について判断する。
本願商標は、前記のとおり、「SOFT-JOYS」の欧文字を横書きして成り、第二二類「はき物(運動用特殊ぐつを除く。)かさ つえ これらの部品及び附属品」を指定商品とする商標であるところ、その構成中、前半の「SOFT」の文字部分は、「柔らかい、柔軟な、手ざわりのなめらかな」の語意を有する英語として一般に親しまれており、これが、本願商標の指定商品中、例えば、各種の靴などについて、その素材もしくは履き心地などの特長を記述的に表示するものとして普通に使用されているものと理解されるのに対し、後半の「JOYS」の文字部分は、取引者・需要者が一般的に有するところの英語の知識からして、その語意を理解することはでき得ないものであると解される。そして、これらの文字部分がハイフンを介して結合した本願商標は、全体として一つの観念を有する熟語、もしくは複合語を形成しているとも認められない。
しかも、本願商標は、前半の「SOFT」と後半の「JOYS」がハイフンを介して左右に分離・配置された外観を呈しており、それ故にまた、これを称呼するときは、「ソフトジヨイス」と一連に称呼されるよりも、むしろ「ソフト」と「ジヨイス」に区切られて称呼されることの方が一般的であると解される。
してみると、本願商標は、必ずしも一体のものとして理解され、常に一連に称呼されるものとはいえない。むしろ、前記認定したとおり、本願商標の前半「SOFT」の文字部分は、指定商品たる履きものの品質、履き心地を表示する商品の記述的部分であると看取されることからして、自他商品の識別標識としての機能を果たす部分は、後半の「JOY-S」の文字部分にあると認めるのが相当である。
したがつて、本願商標は、「ジヨイス」の称呼をも生ずるものである。他方、引用商標はその構成から「Joyce」の欧文字を横書きに表現したものと認められるから、右文字に相応して「ジヨイス」の称呼を生ずるものであると認められる。
そうすると、本願商標と引用商標は、ともに「ジヨイス」の称呼を共通にする類似の商標であるといわざるを得ない。
原告は、本願商標の「SOFT」と「JOYS」は同書、同大の書体による文字で構成されており、いずれか一方が特に看者の注意を惹くことはなく、またこれを一連に称呼する方が自然であり、本願商標の外観、発音方法に照らすといずれかの部分のみが称呼されなければならない理由はない、と主張している。
なるほど、成立に争いのない甲第一号証によれば、本願商標は、「SOFT」と「JOYS」を同書、同大の書体による文字で表した構成から成るものであることが認められ、その書体、大きさからではいずれか一方のみが特に看者の注意を惹くということはないが、本願商標は「SOFT」と「JOYS」との間にハイフンがあり、このように文字がハイフンによつて分離されている場合、一般にはこれを称呼するときはハイフンによつて切断され、一連に称呼されない方が自然であると解されることは前記判示したとおりである。
また、原告は、「SOFT」の文字は「穏やかな、静かな」という意味を有し、それに続く「JOYS」は、「喜び、うれしさ」という人の感情を表す英語の「JOY」の複数形であることは我が国の一般的な英語知識から容易に理解されるところであり、したがつて、本願商標は、全体として「穏やかな喜び」といつた人の心の状態を表す一つの熟語として認識されるものである、と主張する。
しかしながら、例え「JOY」が「喜び」「うれしさ」という意味を有する英語であることが一般に知られているとしても、そもそも「JOY」自体一つ二つと数えられる語ではなく、我が国において「JOYS」なる語が「JOY」の複数形として一般に使用され、認識されていると認めるに足る証拠もない以上、「JOYS」なる綴りの英語が「JOY」の複数形であり、本願商標は全体として「穏やかな喜び」といつた意味の熟語として認識されるものであるとはいえない。
以上のとおりであるから、本願商標は商標法第四条第一項第一一号に該当するものであるとした審決の認定、判断は正当であつて、審決に原告主張の違法はない。
三 よつて、審決の取消しを求める原告の本訴請求は失当として棄却する。
〔編注〕本件に関する特許庁における手続の経緯は左のとおりである。
原告は、昭和五三年九月一三日、欧文字を横書きした「SOFT-JOYS」なる商標(以下「本願商標」という。)について、指定商品を、第二二類「はき物(運動用特殊ぐつを除く。)、かさ、つえ、これらの部品及び附属品」として商標登録出願(昭和五三年商標登録願第六七九五〇号)をしたが、昭和五六年五月二六日拒絶査定を受けたので、同年九月二四日審判を請求し、同年審判第一九六五三号事件として審理されたが、平成元年八月一七日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決があり、その謄本は同年一〇月一六日に送達された。なお、原告のための出訴期間として九〇日が附加された。